2009年3月12日木曜日

Q73: 現地校で(5):Report


 現地校の
3年生くらいから、レポートの書き方のトレーニングが始まります。

 州や学校区により多少異なりますが、34年生でレポートの作り方・書き方の練習が始まります。

 最初は、レポートなどと呼ばずに、先生の指示に従って作り上げたページを、手作りのfolderにまとめていきます。
1、ひとつのテーマについて、授業の活動の中で、絵や文章などのページを、何ヶ月もかけて徐々に書き上げていきます。
2、そのテーマを示した表紙をデザインし、作り上げます。
3、表紙と本文を、金具を使って、1冊に仕上げます。
 簡単なものですが、これが最初の段階のレポートです。
 3年生前後の学年のお子さんが、こうして作成したレポートを、学校から持ち帰ったり、オープンハウスの時に教室の机の中においてあります。

 レポート作成の作業は、ひとつのテーマについて絵や文章を書き、それらをまとめた小冊子を作る経験をさせることです。
 その作業の過程で、各ページをどのようなデザインにすれば、また、どんな順序に並べれば、その小冊子を読む人たちに、アッピールしたり、理解をしてもらえるかを、考えさせます。

 昨年秋に始まった学年も、終盤に近づいてきました。
 お子さんが、ここで紹介したような小冊子を持ち帰ってきたら、デザインやページの順序、また全体の構成などについて聞いてあげてください。得意そうに、説明をしてくれるはずです。

 それが、レポート作成のトレーニングの第一歩の成果です。 

2009年3月11日水曜日

Q72: 乳幼児に英語?!


Q
 日本人の友人に「赤ちゃんにも英語で話しかけた方が良いよ」と言われましたが?
   (日本語がネイティブ(母語)のお母さんからの質問です。)

A: とんでもない! 絶対に反対です!

 私は、これまで30年間、ロサンゼルスを中心に、アメリカ・カナダの多くの場所にお住まいの人たちの子育てと教育についてのご相談に答えてきました。
 その中には、日本で育った日本人の保護者だけではなく、国際結婚されたお母さん、日本で育った外国人など、様々な文化や言語を持つ方達も多く含まれています。 

 その経験から断言できるのは、「乳幼児に自分がネイティブとして持っている言葉(母語)で話しかけることは、子どもにとってはもちろん、親としてのあなたにも非常に大切だ」ということです。
 あなたが、赤ちゃんへの愛情を心から表現できるのは、あなたの母語です。その言葉と言葉に含まれる感情を、赤ちゃんはしっかり聞いて、受け止めているのです。
 「赤ちゃんは言葉をしゃべれないから、理解できていない」と早合点しないでください。最近の赤ちゃんの脳の活動の研究からも、「赤ちゃんは、親が言葉で伝えようとしていることを理解している」との結果が出てきています。

 ご自分の言葉で、ご自分の感情を素直に伝えることを大切にしてください。そこで得た穏やかで豊かな気持ちが元になって、その後の言葉の習得が飛躍的に進みます。

 絶対に、変な英語で、赤ちゃんに話しかけないでください。

2009年3月10日火曜日

Q71: 塾通いは必要?(3):数学(2)


 「塾で数学を勉強させる」理由のうち、「現地校のため」を少し詳しくみてみましょう。

現地校のサバイバルのために

 想像して見てください。言葉も分からず、何を勉強しているかも分からない授業で、一人机に座っている苦しさを!

 「算数(数学)の授業が分かったから、現地校の勉強に何とかついていけた」
 この言葉は、ABCも分からずに現地校へ入れられた子どもの多く、またその保護者が、渡航直後の現地校への適応の成功を振り返って語るものです。
 英語でかかれた応用問題は全くだめでも、授業で扱っている学習内容の計算だけでもできれば、自信がつきます。この自信が支えとなって、学校に通う元気も出てきます。

 「算数ができるので、先生に褒められた」のが、自信をつける大きな理由になったと、思い出を語る子どももいます。
 アメリカの学校では、「褒めて育てる」教育を実践しています。
  先生が子どもに向かって褒めるだけではなく、クラスの中で「太郎は、算数がよく出来るのよ」と紹介します。この紹介で、他の子ども達は太郎君に対する尊敬の気持ちを抱き、友達にもなれます。

 英語が出来なくても勉強できる算数(数学)は、現地校のサバイバルのために、絶対に必要です。

日本語での予習・事前学習
 現地校で次に習う内容を、日本語で予習するのが、大変効果的です。
 子どもが読んでわかる日本の教科書で、明日勉強する内容を予習します。応用問題は要りません。計算の仕方の予習だけでも十分です。
 少し分かるのならば、英語の教科書を日本語で予習します。
 もちろん、次の内容に進むために、すでに勉強した内容を日本語で復習することも大変有効です。 

塾や保護者が指導
 こんな指導をしてくれる塾があれば、理想的です。探してみませんか?
 塾だけではなく、家庭教師などで個人的に教えてもらうのも方法のひつです。
 BESTは、お父さん・お母さんが教えることです。計算だけなら、誰でも教えられます。事実、「親が教えてくれた」と感謝している子ども達が多くいます。ぜひ、がんばってください。 

 現地校のサバイバルへの、算数の力。
 一度、お子さんに聞いてみてください。 

 (少し長くなりました。ごめんなさい)

2009年3月9日月曜日

Q70: 塾通いは必要?(2):数学(1)


Q
 塾で数学(算数)を勉強させよう、と思っているのですが?

A: 日本語で数学(算数)を勉強させる目的を、はっきりさせてください。

 「日本語で数学を勉強させたい」と、保護者が希望する理由には、大きく分けて「帰国」と「現地校」があります。それらを、ちょっと詳しくみてみましょう。

帰国した時に困る
 日本に帰国するので、その時の学校の勉強についていけるよう、また受験のときに困らないように、準備しておく。

1、 日本の数学は進んでいる
 「進んでいる」の意味は、二つ。
   学習進度が早い:日本の教科書の方が進み方が早い。
   学習レベルが高い:難しい問題や応用問題が多い。 

2、 数学が得意・弱い
 数学が得意(弱い)なので、将来のことを考えて、日本語で勉強させたい。 

3、 日本式(?)の数学
 日本とアメリカでは、数学の教え方や扱う問題に差がある。
 子どもも日本のやり方に慣れているので、日本式の数学を勉強させたい。 

4、 理科系進学希望
 将来、日本の大学で理科系に進ませたいので、日本の数学の内容とレベルを、日本語で勉強させておきたい。
 入学試験を受験するつもりなので、受験準備として日本の数学が必要。 

 「数学を塾で」と希望される保護者が、その理由としてあげるものを整理してみました。

 アメリカでの滞在が短い場合や受験準備のために、と言うのが最も多い理由です。
 その場合は、塾での勉強を、私も賛成します。ただし、その塾が、お考えのような指導をしてくれるのかどうか、よく調べてからにしてください。
 最近は、「日本の数学は進んでいる」といえない部分が増えてきました。 一度、補習校と現地校の教書を比べてみてください。 

 最後に、現地校との勉強のバランスをよく考えることが必要です。

 「現地校の勉強のために」は、次回です。

2009年3月6日金曜日

お知らせ(1):週末はお休み


 このブログ、週末はお休みとさせていただきます。

 今年はじめから、このブログを毎日続けてきましたが、書く時間を取るのが少し大変になってきましたので、明日から週末(土・日)は、お休みにさせていただきます。
 週日は、これまでどおりにがんばって発信しますので、ご愛読ください。

 また、週末は、お子さんとゆっくりした時間をお過ごしください。

 このコラムを続けるにあたって、渡航したばかりから長年滞在しておられるご家族まで、幅の広い質問にお答えするよう、心がけてきました。
 その質問は、これまでの私の経験の中で、保護者やお子さん達からお聞きしたものが中心です。
 さらに最近は、このブログをご覧の皆様からいただいたご質問を、一般的な質問に変えて、回答させていただいています。

 皆さんからのご質問もお待ちしております。

Q69: 高校生で突然帰国!?


Q
 突然帰国になりました。高校生の子どもをどうすればいいのでしょうか? 

A: いくつかのチョイスを紹介します。お子さんの交えて、ご家族でよくご相談を。

1、現在の学校に残す
 お子さん一人だけ、またはお母さんと一緒に、現在の学校を卒業するまで残す。
 お子さんやお母さんが永住権や市民権を持っていない場合は、滞在ビザが問題になります。
 公立高校に留学ビザで残ることは、ほとんど不可能です。、 

2、他の学校で、アメリカに残す。
 留学ビザが取れる私立の学校に転校させて、アメリカに残す。
 ビザが発行でき、途中編入を受け入れてくれる学校が少ない。 

3、日本の高校に編入
 学年にもよりますが、編入を受け入れてくれる日本の高校があります。
 編入試験のタイミングを逃した場合は、帰国生のために随時編入を実施している学校の受験が可能です。
 また、高校3年の夏まで随時編入で入れる、さらに寮のある学校がいくつかあります。 

4、定時制・通信制
 毎日の通学が必要のない、定時制や通信制の高校で、帰国生も編入できる学校が増えてきています。
 高校の卒業資格の取得だけを目的とする場合に選択できます。 

 高校の選択肢を、本当に簡単に紹介しました。

 今後の学校選択については、当然、大学進学、特に帰国子女大学入試についての情報や考慮が必要です。
 それらを含めた判断は、お子さんの個人的情報やご家族の考え方により大きく異なるので、このブログでは書けません。
 私の方に、個人的にご相談ください。

2009年3月5日木曜日

Q68: 現地校で(4):Journal


 「文章を書く」トレーニングの第一歩は、「
Journal」です。

 小学校に入ると文字・読み(Phonics)に少し遅れて、「文章を書く」トレーニングの第一歩として、「Journal (writing)」が、始まります。

 「Journal」の訳の「日記」のとおり、子どもが日々の生活で経験した具体的な事柄を書かせます。
 作文の最も基本的な方法です。例えば、朝起きてから、学校に着くまでの出来事を、時間の順序に従って書き並べていく方法、子ども達にとって文を書き始めの良いトレーニングになります。
 書く内容を、具体的な事柄から自分自身の感想などと、対象を広げて、作文の次のステップに移っていきます。 
 この方法は、日本の学校での初期の作文指導と同じです。

 しかし、子どもの作文のステップは同じでも、指導の方法は場所によって異なります。
 「東部の学校では、スペルや文の間違いを、先生が丁寧に添削して、直してくれました。でも、こちらの学校では、ただ書かせるだけで、何も直してくれないのですね。」と、東部からLos Angelesにお子さんと引っ越して来られたあるお母さんの言葉です。

 先生のJournalの添削には、大きく二つの流れがあります。
 ひとつ目は、「正確な文章を書く指導」です。もうひとつは「文法やスペルなどの細かいルールよりも、子どもが自由に書くことを奨励する指導」です。
 東部の学校では、お母さんの言われるとおり前者の傾向が強い様です。ただ、カリフォルニア州では二つの指導方法の間を、10年くらいで行き来しているのが実情のようです。

 皆さんのお子さんは、どんな作文指導を受けていますか? 

2009年3月4日水曜日

Q67: 日本の学校選択制?


Q
 日本の帰国先で、公立の学校を選ばなければいけないと言われましたが?

A: 日本の市町村の一部で、公立の学校を選ぶ学校選択制を採用しているところがあります。

 教育・学校改革のひとつとして、
1、保護者や児童生徒のニーズに応える、
2、学校同士で競争させて、地域全体の教育レベルを向上させる。
などを目的に、お子さんが通学する公立の小学校や中学校を選べるようにしたのが「学校選択制」です。

 教育の多様化を目指す、文部科学省の後押しも受けて、日本全国で徐々に広がっています。 

 「どんな基準で選べばいいのですか?」と、幼稚園児のお母さんに日本で聞がれたことがあります。
 まさに、「自分の子どもに必要でふさわしい教育・学校は何か?」を考え、それぞれの学校の現状についての情報を集めて、保護者が子どもの学校を決めることになります。
 子どもの教育についての「自己責任」です。 

 ただ、学校選択制を採用し数年実施した教育委員会のいくつかで、その制度を中止したり、選択できる学校を少なくしたりする見直しが始まっています。
 一部の学校に児童生徒が集中したり、子どもが遠くの学校に通うことで地域のまとまりが弱くなる、などがその理由になっています。

  お帰りになる地域の学校選択がどんな実情になっているのかをよく調べて、学校を選んでください。
 もちろん、わが子の教育の「自己責任」の果たせるように、がんばってください。

2009年3月3日火曜日

Q66: 日本人に育てる?(1):雛祭り


Q
 海外が長くなりました。
   子どもは現地に溶け込んで、成長しています。
   でも、何とか日本人として育って欲しいと思います。
   何か出来ることは?

A:  バイリンガルに育った子ども達の例を、参考までに、シリーズで紹介しましょう。

 今日は、33日です。  何の日でしょうか?
 そうです。「お雛祭り」です。「桃の節句」とも言います。

 20歳半ばに成長した、アメリカ生まれでアメリカ育ちの三女が同居しています。
 この娘が、「お父さん、今年も、お雛様出そうよ」。
 大昔に日本の祖父母からプレゼントされたお雛様を、一緒に飾りました。
 そのあと、ひとしきり、雛飾りの道具の説明と、このお祭りについてのおしゃべりが続きました。

 この三女、実は、現地の保育園で先生をしています。
 「子ども達に見せてあげる」と、小型のお雛様セットを持って行きました。

 日本人?
 「日本人に育てたい。どうしたら?」
 海外のお母さん方からよく聞かれる質問です。 

 「日本人」とは?
 日本語・文化・習慣・考え方・・・・。たくさんのものを思いつきますが?

  また、「海外の子どもを日本人に育てる」には? 

 ここ数年、その回答を探していますが、正直、良く分かりません。

 ですが、アメリカで育った「日本人」の若者が、私の周りに多くいます。
 その人たちの生い立ち、教育などが、参考になるのでは?

 それがこのシリーズ(不定期ですが)のねらいです。

 請う、ご期待!

2009年3月2日月曜日

Q65: 漢字が弱い!


Q
 子どもの漢字を読み書きする力が弱くなってきています。
    何か、出来ることないですか?

A: 子どもが、日々、漢字に接する機会が多くなる環境を作ることです。

 「漢字が弱い」は、子どもの日本語力の話の中で、保護者から出てくる一番ポピュラーなコメントです。
 この言葉は、保護者の経験が元になっています。日常生活の中に漢字があふれている日本で育ち、漢字を習得した経験です。
 漢字の習得には、環境が必要です。
 家庭や補習校でしか漢字に出会わない環境で育った子どもに、「漢字に強い」を期待する?
 (お母さん、アメリカに来てからの自分自身の漢字力が落ちていませんか?)

 補習校小学5年の担任としての、私自身の経験です。

 毎週土曜日、朝のホームルームの時間に漢字テストです。
 「先生、早くテストして!勉強したの、忘れるから!」という子どものリクエストにお答えして、テスト実施。
 昼休みに採点してみると、大変良い成績。担任としては、一安心。
 ところが、授業中に、漢字で引っかかる子どもが多い。
 そこで、帰りのホームルームの時間に、「同じ漢字のテスト」を実施。
 信じられないくらいの悪い点数!
 たった、数時間でなんという違い! 

 これで、担任は反省しました。
 週1回の漢字テストは登校時に覚えればできる。しかし、漢字力は定着しない。
 毎日、漢字に接する機会と環境を作らなければ。
 そこで、子ども達に交渉して、漢字を含んだ例文を、毎日書き写す宿題。
 これが大成功。朝と帰りの時間の漢字テストの成績の差が小さくなりました。 

 それ以来、「漢字力の向上は、漢字を見たり書いたりする機会を増やすこと」を確信しています。

 どうして、環境や機会を作るのかは、次の機会に。

2009年3月1日日曜日

Q64: 塾通いは必要?(1)


Q 塾に行かせたほうが良いですか? 

A: まず、どんな塾があるか、調べてください。

  この質問が出ると、「お母さんは、塾に行かれてましたか」と聞き返します。
 「ええ、小学校の時から行ってました」との答えを、よく聞きます。
 ご自分の経験から、「塾は行くもの」と、思い込んでいるのでは?

  海外で日本からの子どもが通う学習塾には、いくつかのタイプがあります。

進学塾: 
 日本の学校へ進学するための、日本のカリキュラムかそれ以上の学習内容を、受験向けに指導をします。
 日本の「進学塾」のコピーに近く、日本での教材や指導法をそのまま使えるので、日本から進出「進学塾」が徐々に、増えてきています。 

日本語補習塾: 
 国語や算数・数学の勉強を中心に、日本の学校でのレベルの学習内容を勉強します。
 週末の補習授業校での勉強と基本的に同じ内容を、平日に勉強するところです。
 滞在が長くなり、補習校での勉強では少し難しすぎる場合に、国語や算数を個人指導してもらうことができます。 

英語塾:  
 渡航直後の日本人の子どもに、現地校で最低限必要な英語の基礎やエッセイなどを、日本語(時には英語)で指導してくれます。 
 現地校で学ぶ機会のなかった英文法を、日本語で指導してくれるところもあります。 

英語補習塾:
 現地校の日々の勉強を、日本語で補習してくれるところです。
 学校での学習内容や指導方法を良く分かった日本人の先生が、宿題やレポートの手伝いをしてくれます。 

現地塾:
 現地の子ども達を対象に現地校の学習内容を指導する、日本の学習塾と同じような施設が急激に増えてきています。TVでの宣伝も見られるくらいです。
 もちろん、指導は英語で行われます。ReadingMathなど基本的な勉強が中心です。  

 さあ、どの塾に行かせますか?