2009年2月28日土曜日

Q63: 現地校で(3):Reading for Fun

 アメリカの学校での勉強は、「読書力」がもっとも大切です。
 そのため、小学校低学年で、読書の楽しみを教えます。

 一般に「Reading foe Fun」と呼ばれる、小学校の低学年での読書の指導が、非常に大切にされます。 

 「本をたくさん読まされ、よく読むようになった」は、子どもの日本とアメリカの学校生活を比べたとき、アメリカの教育の特徴として、保護者からよく聞く言葉です。
 特に、小学校低学年では、「家での読書、20分間」が宿題として出したり、クラス内で読書量の競争をさせたり、と先生は、子どもが読書習慣を身につけさせるための、様々な工夫をこらします。その指導の努力と成果が、この保護者の言葉で表されています。
 そして、その読書指導は、「楽しむために、何での良いから読みなさい」です。まず、「楽しみ」を与えてその気にさせる、アメリカの教育方法です。

 実は、低学年から熱心な読書指導をするのは、「アメリカの学校の勉強は『読書力』なしには不可能」だからです。
 5年生くらいの現地校の500ページにも及ぶ教科書を見ると、「子どもが自分で読んで、理解する」ことが勉強の基本になっているのが明らかです。日本のように授業で一緒に読んだり、先生が1行ごとに説明するやり方ではありません。この勉強の仕方は、中学・高校・大学と続きます。

 「Reading by 9」は、「9歳までに読書力を身につけないと、一生アカデミックな力はつかない」というショッキングな意味で使われています。その第一歩がReading foe Fun」です。

 ソファに腰掛け、 お子さんと一緒に読書、はいかがですか?

2009年2月27日金曜日

Q62: サマー・キャンプ、 まだ早い?

 サマー・キャンプの募集が始まってます。この夏のキャンプ参加の予定は、早めに立てましょう。

 先日、私の住んでいる市のコミュニティ・サービスの案内の冊子が届きました。
 その中に、サマー・キャンプの案内と募集が入っていました。

 幼児から高校生までの子ども達が参加でりるサマー・キャンプは、本当に多くの種類と数があります。
 1日だけから3週間続くもの、日帰りから宿泊のあるもの、スポーツから数学の勉強までと、また、市役所などが実施するコミュニティのものから、専門家が指導してくれる費用のかかるものまで、「こんなものまであるのか」と驚くくらいです。

 サマー・キャンプの活動は、アメリカ特有の文化です。帰国した子ども達の話でも、長い目で見て、意義の大きかったものがたくさんあります。また、日々の友達や環境から離れて、新しい世界で体験することもたくさんあります。

 最近は、日本に住むかつての私の教え子が、自分の子どもを{我が家を経由して}アメリカのサマー・キャンプに送り込んでくるようになりました。
 サマー・キャンプの人気が高くなっているようです。 

 星の数ほどあるキャンプの中から、お子さんのニーズに合った活動を見つけて、申し込みをし、実際に参加させるまでには、手間隙が懸ります。また、人気のあるキャンプは、すぐに一杯になってしまいます。
 ぜひ、早めに、図書館やインターネットなどを活用して情報集め始め、計画を立ててください。お願いします。

(実は、毎年、サマー・キャンプへのご質問をたくさんいただきます。しかし、ほとんどが、「あとの祭り」・・・。ですから、今年は、老婆心を発揮して、早めの警告です!)

2009年2月26日木曜日

Q61: 帰国:高校編入は大変?

Q 現地校の学年が終了後、日本の高校1年に編入させようと思っています。「編入は大変だ」と聞きましたが? 

A: 編入試験の実施・募集人数などが、事前にはっきりしないので、なかなか大変です。

 ほとんどの学校の編入は「欠員補充」だと思ってください。
 4月の新学期開始後、定員より少ない生徒数になった学年の途中での入学を認めるのが、編入制度です。
 そのため、編入試験の実施の有無がはっきりせず、もし実施するにしても試験日・募集学年が早い時点でわからず、募集人数も数名程度、が一般的な学校の実態です。

 帰国子女受入校の一部には、現地校の学年終了をして帰国してくる高校生のために、編入枠を特別に設けて待っていてくれる学校があります。
 このような学校でも、編入試験の時期はわかりますが、4月の入学者数によって変わってきますので、募集人数は5月くらいにならないと、はっきりしません。

 このように高校編入は「事前にはっきりしたことが分からない」ので、なかなか大変です。「運がよかった」は、高校編入に成功した保護者の言葉です。

 朗報は、いつでも編入試験を受験できる「随時編入」を実施している受入校がいくつかあることです。ただし、「s随時、受入れます」は、「誰でも、受入れます」という意味ではありません。英語力を上げる、それを客観的に評価できる英検やTOEFLを受験しておくことを、お勧めします。
 もしろん、現地項の勉強・成績が第一であることは、入試と同じです。お忘れなく。

2009年2月25日水曜日

Q60: 現地校で(2):Show & Tell

 キンダーから「Show & Tell」のトレーニングが始まり、2年生くらいまで続きます。

 Show & Tell
 自分の大事にしている物(お人形やおもちゃ)をクラスに持って行き、他の子どもに見せて(show)、説明したり質問に答えたり(tell)する活動です。

 キンダーから2年生くらいまでの間に、一人20回くらいの発表の機会が与えられます。
 最初は、おもちゃなどから始まりますが、授業で使う道具や勉強で出てきた資料など、何でも使って活動します。クラスや先生により、この活動の呼び方も千差万別です。

 この活動のねらいは、
  1、 人前で話をする。(声・話し方・姿勢などに気をつけて)
  2、 人の話を聞く。(静かに、しっかりと)
  3、 聞いた内容について、質問やコメントをする。
のトレーニングをすることです。

 このトレーニングは、3年生以上になると、全ての授業活動の中で繰り返され、アメリカの学校での大切なスキルのひとつになります。

 「アメリカ人は、人前での話や発表が上手」と言うのは、このキンダーからのトレーニングのおかげです。

 お父さん・お母さんの前での Show & Tell を、お子さんにお願いしてみませんか?

2009年2月24日火曜日

Q59: 「バイリンガル」って?(2)

 第2ステップ : 「日本と英語の文字を知る」
 Q4: 「バイリンガル」って?(1 でお話した「英語と日本語で日常会話ができる」 の次の、バイリンガルへのステップです。

 前回お話したのは、幼児の日常会話についてでした。 

 その後は、家庭内で使われる言葉から、外の世界で使われる言葉へと、単語(ボキャブラリー)の数と質の増加が必要になります。
 そのためには、他の子どもとの接触、読み聞かせ、TVやビデオ、などが大きな役割を果たします。これらを通して身につくものは、知識とそれに関連する言葉です。知識を増やすと、言葉が増えることになります。

 会話の中に出てくる以上の知識を見に身につけるのは、「読書」が欠かせません。本を読めるようになると、自分の自由な時間に、自分の好きなテーマで、未知の人たちと会話をすることになるのです。それに伴って、単語の数が飛躍的に増加して行きます。 

 読書の指導の第一歩は、文字を教えることです。日本では幼稚園で「ひらがな」、アメリカではキンダーで「ABC」から始まります。
 ひらがなの場合は数は多いのですが、文字と発音が一致してるので一文字ずつ発音できます。
 しかし、英語の場合は異なるので、アルファベットと音のつながりを「フォニックス(Phonics)」で学んでいきます。英語の単語のスプリングを音に置き換えて、その音と自分が会話で覚えている単語の発音が同じとき、「この文字は、あのことばだ」と理解します。しかし、単語の数が少ない子どもは、「読む」能力が伸びにくいことになります。

 家庭で日本語を使っている場合は、英語の単語を増やす手伝いが必要となります。

2009年2月23日月曜日

Q58: 米大学進学:TOEFLは必要?

Q 渡米2年で、アメリカの大学進学希望です。TOEFLの受験対策に、夏休みに日本の塾で勉強する必要はありますか

A: 日本の塾での勉強は必要ありません。
     現地高校の勉強が、TOEFL準備です。

1、来られて2年。これから英語が最も延びる時期です。
  夏休みは、アメリカで高校レベルの英語付けになるよう、薦めます。

2、最近、TOEFLiBT)は試験内容が大きく変わりました。
  Readingが多くなり、Speakingも入ってきました。
  日本語で文法の説明を受けても、点数は上がりません。
  英語の文章をひたすら読んで、Readingの対策。
  エッセイ(five paragraph essay)の勉強をして、エッセイとSpeakingの準備。
  これがTOEFL受験対策のBESTな方法です。 

3、出願にTOEFLは、必要ですか?
  現地の高校を卒業していると、本当に一部の大学以外は、願書提出にあたりTOEFLの成績の提出は求められません。
  それよりも、SATACTの成績が必要なのでは?

 アメリカの大学進学のための試験勉強は、現地校の学習が最重要です。
 それと、入学願書をよく読むことです。
 お忘れなく!

2009年2月22日日曜日

Q57: 帰国:補習校の成績表?

Q すぐ、帰国します。補習校の成績を、日本に持って帰る必要はありますか? 

A: どうしても必要なものではありません。
   しかし、帰国後の指導の参考にしてもらえます。

  海外の補習授業校は、正式には日本の法律で決められた「学校」ではありません。
 そのため、補習校の卒業証書や成績証明書は、正式書類としては扱われません。補習校によって「成績証明書」を発行しないのは、この理由です。

 帰国後の日本の学校への入学や編入のために必要な書類ではありませんが、入学後、学校の先生がお子さんを指導するときの参考にはなりますから、できるだけ持ち帰ってください。

 補習校にお願いして書類を発行してもらうことができない場合は、それまでにもらった通信簿や成績表などを、コピーでもいいですから、担任の先生に渡してください。作文やテストの答案なども、先生が指導する時の貴重な資料となります。

 4月の新学年の始まりには、ほとんどの学校でクラス替えがあり、クラスのメンバーが新しくなります。担任の先生は、新しい子ども達の学力や性格などを把握して、学級経営を行います。その時に、日本語で書かれたお子さんの様子を示す資料が多いほど、長所や弱点などを正確に把握してもらえます。
 また、学年途中の編入の時には、すぐにお子さんの学習歴を把握してもらえるので、特に役立ちます。

 お子さんのために、準備して、持ち帰りましょう。

2009年2月21日土曜日

Q56: 現地校で(1): はじめに

 日本の学校では見られない、アメリカの学校の指導内容や指導方法を紹介し、その指導の目的を考えて見ましょう。
 今日は、このシリーズ「(アメリカの)教室で」の第1回目で、その大切さをお話します。

  「現地校は、日本の学校と違う」
 頭では分かっていますが、子どもの毎日の学校生活や学習内容・指導方法を見ていると、「何で、こんなことをやらしているんだろう?」と疑問に思うことはありませんか?

 皆さんのそんな疑問にお答えできるように、現地校での勉強や出来事を紹介し、「なぜそんなことをするのか」を説明してみます。

ご注意・お願い
 このコラムでも繰り返し述べてきましたが、「アメリカの教育は、州や学校区によって大きく異なる」ことを、もう一度ご確認ください。ここで紹介した事柄が、皆さんのお子さんが経験しているのと違う場合があります。活動の呼び方、やり方、説明も異なると思います。

 しかし、このシリーズで紹介する内容は、全米各地の現地校で見聞したものに、私自身の30年間の経験から得た考え方を紹介するものです。ですから、帰国された保護者執筆の「アメリカ生活体験記」で語られている特定の州や地域の出来事よりは、全米の状況を反映していると、私は自負しています。

 もちろん、アメリカ(カナダ)の教育では、私が知らないことが無数にあります。ですから、私の言っていることが違うときは、ご遠慮なくご指摘の上、ご指導ください。 よろしく、お願いします。

 前置きはこれくらいにして、スタートしましょう。最初の次回は「Show & Tell」についてお話します。

2009年2月20日金曜日

Q55: 帰国子女の受験資格?


Q
 日本企業から海外に派遣された社員の子どもでなければ、帰国子女にはならないとききましたが?

A: 日本人の子どもが日本に帰国すれば、帰国子女」が原則です。
    ただし、「帰国子女としての入学・編入の資格」は、学校により異なります。

 日本の学校に入学したり編入したりする時に、「帰国子女」として扱われる条件を挙げてみましょう。

1、日本国籍
 子ども自身が日本の国籍を持っていれば、問題ありません。
 しかし、子どもが外国の国籍・市民権だけしか持っていなくても、両親のどちらかが日本国籍を保持していれば、子どもは「帰国子女」となる場合があります。
 また、日本で永住権を持っている外国人の子どもが、「帰国子女」として扱われるケースもあります。

2、保護者の職業
 ご質問にあるように、保護者が「駐在員」である必要は全くありません。自営・学生・主婦・無職?、何でも関係ありません。
 帰国子女入試を実施している学校(特に大学)の一部で、「保護者の海外滞在に帯同」を条件として、子どもだけの海外留学者の受験を制限しているとことがあります。(これが、ご質問のケースに当たると思われます。)

3、海外滞在年数・学年
 海外に、連続または通算で、何年(何学年)の滞在していたか、を受験資格としている学校があります。
 また、滞在時の学年で受験資格が決まることもあります。例:2年以上で現地の高校卒業

4、帰国後の年数・時期・学年
 海外から帰国して何年(何学年)経過したか、何年何月に帰国したか、帰国時に何年生に入学・編入したか、の受験条件です。例:高校1年の夏に帰国でも、帰国子女大学入試の受験可。

5、上記3と4の組み合わせ
 海外滞在年数の長さにより、帰国後の年数に差をつける場合があります。

6、海外の学校の種類
 現地校での学習が海外子女としての基本です。日本人学校での学習歴も帰国子女歴として、考慮する学校もあります。

7、帰国後の生活
 日本帰国後の居住地(公立の場合)、通学時間、家族と同居、など・・・。

8、その他

 このように、「帰国子女」としての受験資格は複雑ですので、受験予定の学校の募集要項を熟読することをお勧めします。



2009年2月19日木曜日

Q54: 受入校のタイプ(5):新しい受入校

 新しく帰国子女の受入を始めた学校について、見てみます。

学校が変わった!
 少子化に伴う、サバイバルを掛けた私立の学校の「学校改革」が急速に進んでいます。
 「私立校の男女共学化」が最も一般的ですが、「大学附属化」「新教育プログラム導入」などで、学校が変わってきています。
 その改革を機会に、国内生と異なった学力(たとえば英語)を持つ帰国生を、国内生とは別に積極的に募集しようとする学校が現れてきています。

公立の中高一貫校・中等教育学校
 日本全国で新設されている公立の中高6年一貫教育校は、新しい教育を目指しています。
 その中に、「国際化」「新しい学力」などを教育目標を上げ、帰国子女を積極的に募集している学校があります。
 これらの学校の入学検査は、私立のような学力試験ではなく、作文・面接を加えた総合的な判断が基本です。そのため、帰国生には受験しやすい内容になっています。
 「国際中等教育学校」と、帰国子女受け入れ枠を確保した学校も出できました。

どこでもなれる受入校?!
 「帰国子女受入校」になるのに、何の資格もいりません。ただ、「受入校!」と手を挙げれば良いだけです。帰国生向けのプログラムや特別指導など必要ありません。
 生徒数が減って学校経営が厳しくなってきたので、帰国子女受入校に新しく加わった学校もあります。サバイバル作戦の一つです。

 「新しい受入校」と言っても、様々なタイプと理由があります。
 「受入校」を漠然と捉えるのではなく、ご自分でしっかり調べて、学校を選んでください。
 そうしないと、お子さんが入学してから、後悔しますよ!

2009年2月18日水曜日

Q53: 日本の大学:生活費は?

Q: 日本の大学に進学した場合の、生活費はどれくらいかかるのですか?国立・私立での差はありますか?

A: 生活費は、大学ではなく、「自宅通学」「下宿」かで大きな差があります。

入学時の生活準備
 2008年春に4年制大学・短大に入学し、受験から入学までに要した費用の調査があります。

 まず、大学生として生活を始める準備です。
  生活用品(家電製品・寝具など) : 下宿生 30万円、自宅生 8万円
  住まい探し(敷金・礼金など) : 下宿生 27万円、 自宅生 なし

 受験・入学にもお金がかかります。 
  大学納付金(受験料・入学金・授業料など) : 私大生 104万円、 国大生 59万円

 以上を合計すると、
  合計: 私大下宿生 214万円、 国立自宅生 109万円

 となり、私大下宿生は、国大自宅生の2倍の費用が必要でした。

「全国大学生活協同組合連合会調査」  (時事通信 2008106日)


下宿生への仕送り

 別の調査によると、
   自宅外通学者への年間仕送り額(平均) : 96万円
   仕送り額、100125万円が最も多く、全体の約3割を占めています。

注意:
 ここで紹介した調査は、日本全国のものです。帰国生の進学する大学が集中する首都圏は、下宿代などの生活費が高くなることを、お忘れなく。

結論: 私立大学に進学し、下宿した場合が、最も教育費がかかる。


2009年2月17日火曜日

Q52: 帰国:現地校から日本人学校へ転校?

Q: 5年間現地校で、8年生の子どもがいます。今年中に帰国し高校受験なので、この4月から日本人学校へ転校させようか、と考えています。帰国子女受入校の受験でメリットはあるのでしょうか?

A: 英語から日本語での勉強の突然の変更に適応し、成績を維持できるお子さんですか?
   また、どんな入試タイプの学校を受験させますか?

 日本への帰国・帰国適応や受験準備のために、現地校から日本人学校へ転校する(させられる)お子さんがいます。
 これまでの例を見ると、この転校が日本帰国の学校へのソフトランディングになるケースが多くありますが、逆に日本人学校での適応に苦労する子どもがいます。

 「日本人学校に転校後のトラブルで、現地校では良かった成績が、大きく落ちてしまうと、合格させるのに苦労する」という言葉を、ある帰国子女受入校の入試担当者から聞いたことがあります。この学校は、現地校・日本人学校を問わず、海外での学習・生活を評価して、入学させるタイプの受入校です。

 一方で、海外の学校の成績よりも、入試当日の成績で合否を決定する受入校もあります。このような学校を受験するためには、日本語での教科学習・受験トレーニングが必要になります。

 どの様なタイプの帰国受入校を受験し、進学させるのか? 日本帰国後のお子さんに受けさたい教育は何か、を含めて、よくお考えの上、日本人学校への転校を判断してください。

2009年2月16日月曜日

Q51: 受入校のタイプ(4):公立の受験進学校

 今回は、「公立の受験進学校」を、帰国生の立場から見てみます。

公立高校
 近年、東京都の「進学指導重点校」のように、公立の高校の進学実績を上げる動きが他の都道府県にも広がってきています。私立の受験進学校に後れを取った、公立高校の反撃です。
 3年間で難関大学に合格させるためには、入試向けの学力の高い生徒を取り、ものすごく集中した指導が必要です。そのため、早朝・放課後・週末・休暇中などに補習授業が実施されます。部活などの時間はほとんど取れないのが,現実です。

 このタイプの学校を希望する帰国生は、特別入試ではなく、国内生と同じ入試を受けさせられるのが普通です。そのためには、海外だけではなく、帰国後の適応しながらの受験勉強が大変になってきます。
 現実的には、このタイプの学校に入学している帰国生は、海外の日本人学校で学んだか、現地校で学んだあとに日本の中学に編入し、しばらく在籍した人が多いと思われます。

公立中等教育学校
 私立に対抗して、公立の6年一貫教育のための中等教育学校が、日本全国で増えてきました。
 中等校は、ただ単に中学と高校を一体化したのではなく、6年間を生かした特長のある教育を目指しています。そのため、入試(私立の中学入試に相当)では、筆記検査だけではなく、出願時の様々な資料の提出、作文・小論文や面接の実施で、総合的に合否を判定します。そして、本音では、6年一貫教育をとおして,受験の学力もつけ、立派な大学進学実績を上げる学校を目指しています。

 「総合評価」を活用し、「進学実績」を目指すと、英語力・海外体験・現地校で学んだスキルなどを期待して、帰国生に注目が集まります。中には、「国際中等教育学校」として、帰国生や外国人のための入学定員枠を設けている学校もあります。そのため、帰国生に取っては受験しやすく、入学後も未学習内容の勉強や適応に十分時間が取れる、良い学校だと思われます。

 しかし、中等校はまだ卒業生もなく、最終的な進学実績を示せていないせいでしょうか、帰国生の人気はもう一つのようです。たとえば、東京都立立川中等教育学校の今年の入試では、国内生の合格倍率約10倍に対して、帰国生は2.5倍と低調でした。
 今後の動向に注目しましょう。

お子さんは、受験文化に耐えられますか?
 公立・私立を問わず、受験進学校への進学を考えるとき、一般入試を受験して日本の大学に進学するための勉強や指導のカルチャーは、海外・帰国生には体験のないものです。ご自分のお子さんが、そのカルチャーの中でサバいぶしていけるのかどうか、しっかり判断することが大切です。(念のために!)

 次回は、「新しい受入校」です。

2009年2月15日日曜日

Q50: 日本の大学:国立・私立、学費の差は?

Q: 息子を日本の大学へ進学させる予定です。
   国立大学と私立大学の、学費の差は、どれくらいでしょう?

A: 学費: 私立は、国立に比べて、大きくて2倍です。

学費
 学費には、入学金・授業料・諸経費等が含まれます。
 これらをまとめて、入学1年目の金額(初年度納入額、概算)を、文学部で比べてみましょう。

国立大学:
 全大学・全学部 82万円 (標準額、入学金:28万円、授業料:54万円)

公立大学: 
 首都大学東京・全学部 66万円 (入学金:14万円、 授業料:52万円)

私立大学:
 慶應大学・文学部    115万円 (入学金:34万円、 授業料:71万円、その他:10万円)
 上智大学・文系     117万円 (入学金:27万円、 授業料:67万円、その他:23万円) 
 早稲田大学・文学部 123万円 (入学金:29万円、 授業料:78万円、その他:16万円)
 立命館大学・文学部 144万円 (入学金:30万円、 授業料:83万円、その他:31万円)

 私立大学の場合、大学学部により差がありますが、文系学部はここに示した金額程度、理系学部は5割増、医・歯学部はピンキリ、が一般的です。

 保護者の皆さんは、「国立は安い」との印象をお持ちのようです。
 しかし、このデータでお分かりのように、その差は思われていたより、小さいのではないでしょうか?

 説明が、少し長くなるので、「生活費」は次回に回します。

 私の大学時代の授業料は、国公立で月1000円、私立はその10倍が相場でした。
 大昔ですね!すみません。

2009年2月14日土曜日

Q49: 受入校のタイプ(3):私立の受験進学校

 今回は、受験進学校を、帰国生の立場から見てみます。

「受験進学校」?
 「受験進学校」とは、「一般入学試験での難関大学への進学率が高い学校」としておきます。
 一般入試というのは「筆記試験の得点で合否が決められる試験」のことで、最近増加している「推薦入試」「AO入試」特別します。

 受験進学校には、次の様な特徴があります。
1, カリキュラムの前倒し
 指導要領で決められた各学年の学習内容を、低い学年で学習させるカリキュラムを採用している。
 たとえば、中高6年間の勉強を。最初の4年間で学習させる。
2, 受験勉強の指導に熱心
 難関大学に筆記試験で合格するために、それらの大学の入試問題や出題傾向を熟知し、授業や教科の指導に活用している。  
3, 徹底した進路指導
 難関大学の入試情報を把握し、受験生の進路・大学選択の指導を徹底している。

私立の受験進学校
 私立の受験進学校は、ほぼ全てが中学を併設して6年一貫教育を行っています。

 それぞれの学校の受験カリキュラム・指導方法は大きく違います。たとえば、6年間の勉強を4年で終えて、あとの2年を受験勉強や模擬試験などの指導に費やす学校。その一方で、少しゆとりを持たせた5年間で学習を修了し、1年間だけを受験指導とする学校などです。
 この受講科目の前倒しは、帰国生として高校編入をした場合に、注意が必要です。編入時点で未習教科・内容の多い帰国生への授業が実際にどのように行われ、それにお子さんがついていけるかどうかの判断です。

 さらに、海外の学校での勉強と全く異なる日本の受験勉強のやり方に、帰国生として適応していけるかどうかの判断も必要です。進学校の受験カルチャーについていけずに、しばらくして転校するケースもありますので。

 最近の大学入試では、「英語」の学力で合否が大きく左右される傾向があります。そのため、英語力を期待して、帰国生の募集に熱心な進学校が多く見ら、「英語力の保持・伸張」を願う帰国生の受験者数も増加しています。しかし、このような学校を選択する場合、学校の目的は「日本の大学進学」であり、ネイティブの英語力ではないことを,しっかり理解してください。 

 次回は、「公立の受験進学校」です。

2009年2月13日金曜日

Q48: APの日本語テスト?

 今回は、APの日本語試験のお話です。

AP : Advance Placement 
 このブログの Q38: AP をご覧ください。

AP日本語試験 : 「Japanese Language and Culture
 日本語試験の詳細については、実施団体ETSの次のサイトでどうぞ。
    Japanese Language and Culture 

 また、サンプル問題が、次の小冊子に載っています。
    Japanese Language and Culture, Course Description
       (少し時間がかかります。)


AP日本語試験について:
 上の二つの資料を参考に、少し解説しましょう。

 AP試験の1科目である日本語試験は、アメリカのカレッジ/レベルの日本語の授業300時間で学ぶ内容とレベルで、問題が作成されています。
 高校では、年間180日、毎日50分の授業で年間150時間です。これを参考しすると、大学のレベルの授業を2年間受講した学習レベルを想定していることになります。

 日本の小学校では約1000字の漢字を学びます。上の資料では、400字程度の漢字が示されていますが、小学校で学ぶ以外の漢字が一部含まれていますが、基本的には、小学校修了レベルです。また、サンプル問題の会話文や文章を見てみても、小学校高学年レベルの文章と内容だと思います。
 これらから判断して、「補習校などで、小学校修了レベルまでの国語の勉強をした子どもは、AP日本語試験を受験し、合格出来る」と思います。

アメリカの大学への提出・評価:
 アメリカの大学へのAP試験結果の提出は任意、志願者の自由です。しかし、APを受験した努力と合格(3以上)した成績は、入学審査に非常に高い評価を受けます。ですから、日本語試験も含めて、積極的にチャレンジしてください。

日本の大学受験には不要
 帰国子女大学入試を実施している大学での一部で、出願書類としてAP試験結果の送付を「望ましい」としているところがありますが、これまでの例を見ると、入学審査に当たり積極的に評価している様には、見受けられません。特に、日本語試験についての評価は、ないと思われます。