2008年10月3日金曜日

Q5:中学生は大変?!


 アメリカでは、「16歳で自立させる」という伝統的な子育ての考え方があります。
 「Sweet 16 (sixteen)」と、16歳の誕生日を大きくお祝いするのです。

 この考え方は、中学校での指導の中に生きています。

 具体的には、担任の先生が終日面倒を見て指導してくれる小学校での生活と異なり、「自分自身で行動をコントロールして、自立する環境」に投げ込まれます。

1.教科ごとに移動する学校生活。
  異なる教室と自分のロッカーの間を1日に何度と行き来する生活です。アメリカの中学校の広いキャンパスを、あの重たい教科書を全て抱えて移動するのは不可能です。そこで生徒一人ひとりにロッカーが用意されますが、数分の休み時間に、教室からロッカー、さらに別の教室へと、遅刻しないで移動するのは大変です。その大変さは、毎年秋に開かれる「オープンハウス」でご両親も経験できます。

2、中学校での教科担任制への移行。
  小学校の学級担任の先生は1クラス30名程度の子どもを終日指導していますので、勉強だけではなく子どもの行動や人間関係の指導を受けることが出来ました。しかし、中学校の数学の先生は、多分1日で4クラス、人数にすると100人以上の中学生を指導します。学習内容をしっかり教えるプロが中学校の先生です。成績や授業中の行動に問題がない限り、生徒の個人的トラブルに干渉する時間もありません。

3、カウンセラー制の導入
  自立するためのトレーニングに曝されているこの時期は、思春期とも重なり、中学生一人ひとりが様々な問題を抱えます。ほとんどの中学校では、個々の生徒の出席・欠席・遅刻・早退を厳しく監視しています。「生活の乱れをトラブルのサイン」と見て、指導するためです。その指導はカウンセラーが担当するのが一般的です。学校生活よりも、生徒の学習についてアドバイスを主に担当する学校常駐のアカデミック・カウンセラーに加えて、学校区から定期的に心理カウンセラーが派遣されて、問題行動の多い生徒の指導に当たります。

 こんなシステムを通じて、「自立させるため」のトレーニングに曝されているのが中学生です。「勉強よりも自立させることが大切」と考えているように思えます。
 「アメリカの中学校の勉強は簡単ね」との言葉をお母さんからよく聞きます。しかし、「過保護」に育てられている日本の子どもが、いきなり、訳も分からずに「自立」のトレーニングに遭遇したら・・・。
 中学生のお子さんに、学校での生活についてゆっくり話を聞いてあげてください。

2008年10月2日木曜日

Q4: 「バイリンガル」って?(1)


 「バイリンガル」の能力は、いくつかの発達レベルに分けられます。

 1、日本語と英語で、日常生活ができる。
 日常会話が両方の言葉で出来るレベルです。

 言葉を覚える最初は、お母さんの「母語」を真似ることから始まります。「母語」が日本語なら、最初に日本で日常生活を始めます。「まんま」から第1言語の習得が始まります。
 家庭内で、親が使う日本語の単語数はいくらくらいでしょうか?私は言語学者ではありませんが、4歳児で100~200位の単語ではないでしょうか?(忙しい(?)夫婦同士で使う単語の数を参考に?!) 意外と、その数は少ないのでは、と思います。

 赤ちゃんから幼児に成長して、外の子ども達との交流が始まると、第2言語の英語の習得が始まります。これも、他の子どもや大人(保育園の先生?)の話している言葉を使ってコミュニケーションを取る必要性に迫られて身につけていきます。「No!」が最初に憶える英語単語?
 もちろん、英語の言葉はゼロからスタートですが、外の世界の広がりに合わせてその言葉の数も急激に増えていきます。また、言葉を耳から覚える幼児は、当然、相手が話している「ネイティブの発音」を身につけていきます。とても自分ではできない、素晴らしい子ども発音を聞いたお母さんは「うちの子どもは、英語がしゃべれる!」と喜びます。

 5歳でキンダーに入ると、日本語よりも英語の単語の数の方が多くなるのではないでしょうか?
 お子さんは、英語をネイティブとして身につけていきます。多くの子どもや大人と英語で会話することにより、英語の言葉だけではなく、その言葉の意味する知識を急激に増やしていきます。
 この段階で、お母さんが努力しなければならないのは、英語に負けないように、日本語の言葉と日本語での知識に、お子さんをどんどん触れさせることです。我が家の子ども達が、英語で「ままごと」をしているのをみつけてとがめると、「だって、日本語でどういったら言いか知らないもん!」子どもの言い分はもっともです。しょうがありません。ままごと遊びが得意でなかったお母さんですが、一緒に日本語でままごと遊びです。数日後、数人の外国からの子ども達が、わが子と一緒に「日本語でままごと遊び」をしているのをみつけました。

 母語だけではなく、遊びを通して日本語での知識も増やしていく。バイリンガルへの王道です。




2008年10月1日水曜日

Q3:「早卒」って、何?

 高校生からの質問です。
 「早卒(はやそつ)」「繰上げ卒業」などと呼ばれますが、「Early Graduation」の訳です。

 アメリカの高校卒業資格は、1.総単位数、2.必修科目の単位数、3.成績平均値(Grade Pint Average、GPA)の最低・基準が決められています。さらに、卒業資格試験(High School Exit Exam、全米23の州で実施中)合格やボランティア活動などが、卒業要件に入れられている州も多くあります。
 実は、この卒業要件の中に「在籍期間:何年間高校に在籍しなければならないという決まり」がありません。日本の高校でいう、完全な「単位制」になっているのです。ですから、4年制の高校の生徒が、3年でこれらの要件を満たして、卒業資格を取ることが可能になります。ただし、どの高校でも1日に受けられる授業数に限界がありますので、4年制の高校を1年間、または半年間、「早卒」するのが現実的です。
 
 現地校で学ぶ日本人の高校生が「早卒」を考えるのは、1.保護者の任期の都合、2.帰国時に、日本の学齢に戻りたい、が主な理由です。

 「早卒」する為には、必修科目の単位を早めに取り、1日の授業時間を増やして早く必要単位数を確保することです。そのためには、遅くとも10年生の始めから、受講するクラスの計画を立てて準備する必要があります。まず、なるべく早くカウンセラーに相談に行ってください。

 日本の帰国子女受入れ大学への進学にあたっては、いくつかの大学を除いて、「早卒」しても受験に問題はありません。
 
 注意:
 アメリカの教育のルールや内容は、アメリカの歴史・伝統からきている地方自治(Local control)の考え方に従って、州ごとに異なるのが基本です。さらに、地域住民に選ばれた委員が決定権を持った学校区(School District)で学校教育のより詳細なルールが決められます。
 このブログで私がお話しするのは、全米の平均的な内容で、それぞれの州や学校区などで具体的なルールが異なる、と理解してください。ですから、それぞれの回答については、皆さんの州と学校区でのルールを確認してください。

 今回は、ここまで。